『星を継ぐもの』の感想とSFについて思うこととか

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ジェイムズ・P・ホーガン=著『星を継ぐもの』読んできた。

先に申し上げておくと、実はまだ読んでいる途中だったりする。
内容の複雑さも去ることながら読書時間の確保が出来なくなった事情により、現在読み始めてから約1ヶ月ほど経過している状況となっている。別に更新期間が空く云々とか読書時間が遅いとかはどうでもよく、読み始めから読後に感想をまとめるまで時間が空きすぎてしまうと、読み始めた時の感動やら途中湧き上がってくるアツいパッションやらがどこかへ霧散してしまいそうな気がしたので、今回途中でありながら記事にまとめることにした次第である。本当に申し訳ない。

そんな訳で、以下簡単なあらすじと感想とか。

雑なあらすじ

近未来の地球。
旅客機が時速5800km以上で飛んでたりエアカーなる乗り物で空を走ったり物体が透けて見える電子顕微鏡があったりなどなど、現代よりも遥かに発達した科学技術を有した、我々の住む世界に似たちょっと未来の世界。

そんな世界の月面では、存在するはずのない存在が眠っていた。
科学者たちの調べによると、後にチャーリーと呼称されるその存在は5万年以上前に亡くなった男の死体であることがわかる。

物体透視とんでも顕微鏡を開発した原子物理学社ヴィクター・ハントは、優秀な科学者と人類の叡智を結集し、チャーリーにかけられた存在の矛盾を晴らす・・・

SFってなんだ

僕はこの本を読んだことで「SF(サイエンス・フィクション)」とは何たるかを認識する事ができた。

これまで僕にとって「SF」はもっと広義的で、そこまで小難しく扱わなくても許されるカジュアルな作品群であった。舞台が宇宙ならもう大凡はSFだし、人が浮いたりUFOが出てもSF。もっと言えば、現実味のある世界観で非現実味のある現象が起きれば、それは大体SFである。

しかし、今回読んだ『星を継ぐもの』はそんなふんわりした類いのものではない。僕の認識するSFよりも遥かにハードなSFがそこにあった。

SFの語源であるサイエンス フィクション(Science Fiction)は、その名の通り科学的空想を意味している。如何に“科学的”なフィクションやってるかどうか、という点において『星を継ぐもの』はぶっち切りで科学的である。引用しようにも難し過ぎてピックアップに困るが、それはもう文系履修生徒を遠くに置き去りにするレベルでだ。ちなみに僕も例に漏れずこの作品の理系力に置いていかれた者の1人で、作中で語られる科学考証とか理論とか「(ふうむなるほど…わからん…)」と思いながら読んでいた。それでも、分からんなりに書かれている事に説得力を感じたし、なんとなく物語と整合性が取れてるのであろうことは分かる。例えるなら、ファンタジーな事象をファンタジーと感じさせず、あくまでも近未来の世界で起きた出来事として常識の範囲内でリアルに論じる、といった感じ。

本作においては、近未来の月で5万年前まで生きていたとされる死体発見という事象が発生。この問題に対し数多の科学者と天才達の頭脳が挑む。身体の素性や形成具合から見て同じ人類と断ずる者が現れる一方、地球のどこからも発見されていない文字の痕跡のほか、携行食糧から地球上どこにも存在しない魚が発見されたりと、新たな発見と同時に問題は更に深まってゆく。浮かび上がる謎を1つ、また1つと解き明かす。その様はさながら難解なパズルを解いているかのようだ。そして、パズルは思いもよらぬスケールの作品へと組み上がるのであった。

世界規模な未知の事象を人類の積み重ねた知識と技術によって解き明かす。これこそ紛れもなくサイエンスなフィクションである。

「ところでさっきからサイエンスだの科学だの述べているが、サイエンスしてないフィクションはSFではないのか?」

そんな声が聞こえてきそうだ。

ならばそもそもSFの定義はどうなっているか。ネットを漁ってみたが、意外にも僕がこれまで思っていた通り明確な定義が存在せず、時代と書き手によってその解釈は異なる。またSFと呼ばれるジャンルの中にはスペースオペラやサイバーパンクなど、細分化されたジャンルが存在するほか、前述した科学的(サイエンス)のSFではなく思弁的(スペキュレイティブ)なフィクションの方のSFも存在する。さらには、日本の漫画においてはSFを「すこしふしぎ」の略として表現する作品も存在する。



結局SFとは何なのか、余計によく分からなくなってしまった。

だがしかし、それは逆に難しく考えなくても良いという意味ではないだろうか。作り手や時代によって定義が異なるのならば、その時代の読み手1人1人がSFのあり方を決めたっていい。陽電子が云々で時間逆行する『TENET』はSFで、地球を救うため戦艦で銀河に旅立つ『宇宙戦艦ヤマト』だってSFで、宇宙人とラッキースケベする『ToLOVEる』だってSFだし、なんかよく分からんけど出し入れ可能な分身を産み出せる『レプリカだって、恋をする。』だってSFでもいい。
読み手がそれぞれ楽しめる形で定義付ければそれでいいのだ。

感想

結論に辿り着いてしまったのでこの記事はこれで終いとする。

と、そういえばまだ作品の感想を述べてなかったので簡潔にまとめる。

・プロットの期待感が高く斬新。
・展開と共に明らかになる真実に毎度驚かされた。
・用語、言い回しが複雑で苦労した。

以上、ありがとうございました。

星を継ぐもの (創元SF文庫)

【星雲賞受賞作】
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。
 

Amazon.co.jp より

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