『ラプラスの魔女』(角川文庫)ネタバレありの感想

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一作品読み終えたので今回も読書感想文を投稿する。
今回読んだのはこちら↓

東野圭吾=著『ラプラスの魔女』(角川文庫)

ラプラスの魔女
文庫「ラプラスの魔女」のあらすじ、最新情報をKADOKAWA公式サイトより。作家デビュー30周年記念...

初東野圭吾作品だったが面白かった。
長編というだけあって物語が重厚だし、登場人物が多いにも関わらずそれぞれ個性が出てる。さつ人の方法も嘘みたいなトリックだったが、それを裏付ける化学考証と作品設定のおかげで何の疑問も違和感も浮かばない。いちブログ書きとして恐怖を覚える場面がありはしたものの、よく作り込まれた作品だったと思う。




以上が本書の感想。

以下はネタバレ含んだあらすじだったりつっこんだ感想など

あらすじ

ある地方の温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生した。地球化学の研究者・青江が警察の依頼で事故現場に赴くと若い女の姿があった。彼女はひとりの青年の行方を追っているようだった。二カ月後、遠く離れた別の温泉地でも同じような中毒事故が起こる。ふたりの被害者に共通点はあるのか。調査のため青江が現地を訪れると、またも例の彼女がそこにいた。困惑する青江の前で、彼女は次々と不思議な“力”を発揮し始める。

出典:東野圭吾.『ラプラスの魔女』.株式会社KADOKAWA.角川文庫.2018.本書背表紙より

ネタバレ有りのストーリー雑要約




※以下、ネタバレ注意







某年12月、ある温泉地にて硫化水素中毒による死亡事故が発生した。

亡くなった人物は映像プロデューサーの水城義郎(男性・66歳)という名で、赤熊温泉付近の山道にて遺体で発見された。散策中に発生した硫化水素によって死亡したものと見られる。尚、同行していた妻・千佐都(26歳)は一度別れ宿泊地の赤熊温泉へ戻っていたため難を逃れている。

警察は事故調査のため、地球化学の研究者である青江修介に現場の調査を依頼した。現場の状況と収集したデータを判断するに、発生確率が殆どゼロな事故と考えざるを得なかった。そんな青江は調査の最中、事故現場と宿泊地で1人の少女を見かける。その少女は、青江の目の前で溢れてくるペットボトル内の液体を「予知」したかのような行動をとった。どうやら少女はある男の写真を見せて尋ねて回っているそうだ。

調査後、青江の元へ麻布警察署刑事・中岡裕二が訪れる。彼は赤熊温泉での事件以前、被害者である水城義郎の母と接触しており、義郎が最近になって生命保険に加入したことや多額の資産を保有していることに加え、息子の死を予見したかのような相談を持ちかけられていた。今回青江と接触したのは、実際に義郎が亡くなってしまったことに事件性を感じたからであった。中岡が他殺による可能性があり得るか問うてみるも、青江はあっさりと否定されてしまうのであった。

青江が中岡と別れた後、再び硫化水素中毒による死亡事故が発生した。青江は現地新聞記者からの依頼を受け、事故現場の苫手温泉へと調査へ向かう。こちらも野外で発生した事故なため長期間一箇所にガスが滞留する確率は極めて低く、赤熊温泉同様に偶然発生した不幸な事故と見られる。そんな折、青江は宿泊地の苫手温泉で、再び赤熊温泉で見かけた少女と遭遇する。どこか偶然とは思えないと感じた青江は、好奇心から女子に声を掛ける。やりとりの末、青江は事故現場への同行と被害者の情報を与える代わりに、少女・羽原円華の情報を得る。そして青江は再び円華の予知めいた不思議な力を目撃した。

苫手温泉事故調査の一件後、青江はこう思った。

青江
青江

あれ?これ事故じゃなくね?

青江は調査依頼とは関係なく硫化水素中毒死した被害者2人について調べ始めたところ、映画監督である甘粕才生という人物の運営するブログに行き着いた。そこには甘粕の家族に降りかかった硫化水素事故とその後の生活について綴られていた。記事を読んだ青江は甘粕家長女が自宅で発生させたと見られる硫化水素により長女自身と妻が中毒死となったこと、死は免れたものの植物状態となった長男・兼人が特殊な脳手術により奇跡的に回復したこと、事故により長男が記憶障害を起こしていたこと、その手術を行った人物の羽原全太朗という名であること、甘粕自身が家族の友人たちの元へ訪れて回っていたことを知った。更に、才生はこんなことも考えていた。

才生
才生

これまでの一件を元に映画を作るぞ!

同じ硫化水素中毒事故。同じ羽原姓の人物。青江は中岡に円華についてと甘粕のブログの内容を共有、新たに円華が探している人物がブログで奇跡的な回復を見せた甘粕兼人であることに気付く。

一連の事件の根幹に触れた青江は、再び円華と接触する。円華はドライアイスのスモークを利用し2つの事件を再現し、被害者に見立てた青江自身に一連の現象を見せたのであった。どのようにして自身の周りにスモークが滞留したのか一切説明をしない円華はそのまま青江の元を去った。その後、青江は桐宮という女性によって数理科学研究所まで誘われる。そこに待っていたのは、円華の実父であり甘粕兼人に脳手術を施した人物でもある羽原全太朗であった。全太朗は、自身が植物状態だった兼人と健常者である円華に施した手術の内容、手術によって得た能力「ラプラスの悪魔」の正体、その能力は最重要機密であること、そして実は兼人は記憶障害を装っていたことが告げられる。その上で全太朗は事件から手を引くように申し出るのであった。

その後、青江は中岡により、甘粕のブログに登場する家族は記事通りの「理想的な家族」ではなかったことを知らされる。甘粕才生は、理想通りではない家族を無かったことにするために硫化水素による犯罪計画を実行したのだった。そのことを知った植物状態だった兼人は、回復後あえて記憶障害を装った。そして月日が流れ、共犯者の水城千佐都を利用し、父・才生への復讐を実行しようとしていたのであった。

兼人
兼人

才生潰すぞ・・・

そう確信した折、青江は突然円華から呼び出される。

円華
円華

教授、車持ってる?

青江は、呼び出された先で、共犯者の千佐都が才生を連れて兼人の元へ向かおうとしている旨を知る。青江は乗ってきたクラウンに乗った円華とそのボディーガード・武尾と共に、千佐都と才生の乗ったマセラティを尾行する。途中、警察庁の男に妨害されるも、それを武尾が身を呈して阻止、青江と円華はマセラティを追い兼人の待つ山の中の廃墟へ向かう。兼人が予測したダウンバーストによる突風によって廃墟を倒壊させ才生を始末しようとするも、計画を予測した円華によって阻止される。倒壊を最小限に留めることより才生と兼人を救いだしたのであった。

その後、温泉地の事件は警察庁により犯人不明のイタズラとして処理、本当の首謀犯である兼人はそのまま行方知れずとなってしまう。そして、青江の読む夕刊には「映画監督の甘粕才生さんが自殺」との見出しが書かれていた。

つっこんだ感想

東野圭吾さんといえば実に面白いドラマと映画を少々と、ちょ待てよなホテルを観た程度のミーハー知識しかない。とりわけ前者のような「メガネミステリー」を書いてるイメージが強い。その上で今回読んだ『ラプラスの魔女』はどうなのか。完読後の印象を一言で述べるとすると「メガネミステリー」となる。図らずもイメージ通りのメガネだったことになる。
魔女で少女が主人公ならワンチャン「マジカル◯◯」な展開もあるかもと考えてはいたがそんなことはなかった。

そんな『ラプラスの魔女』を読んでどうだったかというと、やはり記事冒頭の通りの感想となる。嘘でも大袈裟でもなく本当に面白かった。青江と中岡が探り当てた疑惑が事件の真相へと繋がって行く過程なんかは特に読んでて気持ちよかった。

この作品を読んだことで、愛情は何なのか、父性とは何なのか、と思わされた。所詮は脳に組み込まれたプログラムと言われれば、まあ知らんけどそうなんかな?と理解せざるを得ない。しかし、僕が息子に向けている愛情の正体がプログラムとか電気信号とか言われるとこう、風情も情緒もない。
あとマウスが交尾を経験することで初めて父性を獲得するという話も、本当かどうか確認しようとは思わないが、やっぱりどこか寂しい気持ちになる。そういえば僕も息子が生まれてくるまでは子どもに興味なかったものだから、確かにこの話は強ち嘘ではないんだろうなと思う。なんか認めたくない事実を自分の経験が補完している様で大変癪だ。
なら母性はどうなのだろうか?システマチックな父性よりも神秘的なものなのだろうか?やっぱり人間の脳はもっとロマンが詰まっててほしい物だ。


ところで登場人物がそれなりに多いのにやたら視点が変わっていくのって東野圭吾作品でよくある手法なんですかね?一人称視点の作品だと思って読んでたからどのキャラに感情移入すればいいか分からなくて迷子になってたわ。何なら中盤まで中々作品に没頭できなかったわ。素人意見で恐縮なのですがこれってよくあることなんでしょうかね?

ラプラスの魔女 (角川文庫)

遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きた。検証に赴いた地球化学研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。東野圭吾が小説の常識をくつがえして挑んだ、空想科学ミステリ!

Amazon.co.jp より

以上、ありがとうございました。

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