著=雨穴『変な家』を読んだ。
前々から人気なのは知ってたが、逆張り人間の性か、人気どころは漏れなく避けて通らないと気が済まない。本作『変な家』も例外ではなく、発売より2年半経った2024年1月にようやく手に取るに至った。
近々劇場版が公開されることが決まっているらしく、書店では続編やシリーズ作品が並び猛プッシュされており、劇場公開に向けての力の入りっぷりが凄まじい。
聞くところによると「どんでん返しのすごいミステリー作品」であるとの評判を耳にしたこともあり、流行りに便乗する意味も込め、本書を購入してみた。2021年発売の作品なのでもう逆張りを解除しても良い頃合いという理由もあったが、3月の劇場公開日が近づいた今が1番の買い時だったはず。
作品について
ウェブライターである著者・雨穴氏が知人の柳岡からとある間取りの物件について相談を受ける。本書表紙にもなっているその物件、間取りをよく見ると不可解な点が見つかる。しかし著者はオカルト専門のライターではあるが建物については素人であった。そこで著者は、設計士でありオカルトやホラーの愛好家でもある知人・栗原に相談を持ちかける・・・
といった導入から物語が始まる。
通常の小説とは異なり、最終盤部を除くほとんどの頁が人物同士の会話と間取りの挿絵によって構成されている。ただの会話というよりかは、どちらかといえばエッセイ、或いは雑誌やwebメディアページの対談記事のように描かれている。
それもそのはず。そもそも本書はweb上の同名記事が元となっている。そのwebサイトとは、あの“あたまゆるゆるインターネット”で超有名なwebメディア「オモコロ」であり、著者の雨穴氏は「オモコロ」のサイトのライターとしてさまざまな記事を投稿している。そのなかの特集記事の1つ『【不動産ミステリー】変な家』が、本書『変な家』の原型となる。ちなみに元となった記事が投稿された後に同名タイトルの動画がYouTubeにて公開され、2024年1月現在までで1,620万回も再生されている。
そんな、元となった記事を1章とし、追加で続章をいくつか綴り書籍化した作品が本作となる。
感想
信じられないくらい読みやすい。文字はデカいし会話多めで画像も多く、読書に慣れてない人によく配慮された作品だと思う。通常300頁程度の小説を読み切るのに1〜2週間を掛けるところだが、本書なら仕事して子供の相手しながらでも2〜3日もあれば余裕で読める。やはり読みやすさは正義である。
読みやすいだけあって内容も理解しやすく、本書の提示する面白さを十分に味わえたのではないかと思う。ただし、ホラー小説としては強引で無理があると思った。
オカルト好きな設計士だからといって推論が突拍子もなさ過ぎる上、その推論が都合よく的中するのだって不自然過ぎる。終いにはそれらのとんでも理論を実行する一族が実在(フィクション)したりと、露骨に世間からの受けを狙っているような、そんな下心さえも窺える。
ただ大衆向けのオカルト作品として読めば楽しめる作品だった。例の因習も、正直フィクションと理解していながらも読んでいて悍ましく思えたし、終盤の種明かしにもページをめくる手が止まらなかった。先述した通り読書に慣れない人によく配慮された良い作品であった。
多分この本は“オカルト好き”が書いた“オカルト好き”に向けた“作品”として読むのが正解、というか元々そういう意図の記事だったのかもしれない。
昔、ひろゆき氏が自身の管理する某掲示板の利用について「うそはうそであると見抜ける人でないと難しい」と語っていたが、それはホラー・オカルト界隈の場合にも当てはまるのかもしれない。
◯書籍情報
作名・『変な家』
著者・雨穴
販売元・株式会社飛鳥新社
発売日・2021年7月20日
定価価格・1,273円(税別)
形態・単行本
判型・四六判
ページ数・248
ISBN・9784864108454
変な家|株式会社 飛鳥新社(https://www.asukashinsha.co.jp/bookinfo/9784864108454.php)
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