『レプリカだって、恋をする。3 』の感想

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著=榛名丼『レプリカだって、恋をする。3 』を読んだ。

レプリカとオリジナル。ナオと素直。二人が向き合う、冬がくる。
 オリジナルがやりたくないことを押しつける身代わり、〈レプリカ〉だった私だけど、その役割を失って。
「素直が何を考えてるか分からなくて、怖い」
 そんな思いを抱えながら、季節は冬に向かっていく。
 素直が修学旅行に行っている間、私はアキくんと一緒に、リョウ先輩の故郷・富士宮へ行くことになった。それぞれ別々の場所で、はじめての旅を楽しみつつ、レプリカの仕組みの謎を紐解くピースを拾い――。
 そして私は、素直が秘めた思いと、知らなかった真実と、向き合うことになる。
――ナオと素直。それぞれの視点から描かれる、転機の第3巻。

出典:「レプリカだって、恋をする。3」榛名丼[電撃文庫]|KADOKAWAオフィシャルサイト(https://www.kadokawa.co.jp/product/322306000870/)

感想

レプリカであるナオ視点で描かれていたこれまでと打って変わり、今作はオリジナル体である素直の視点も同時に描かれている。
学校に登校する決意を固めた素直の心情にどのような変化があったのか。また、どうして文化祭準備期間中レプリカに登校させ続けたのか。そのあたりの意図と変化が深く描かれたことでより深く愛川素直というキャラを知ることができた。

一方のレプリカのナオは、素直が登校している間消されるでもなく自室に留まらされていたことで完全に立場が逆転してしまう。素直が成長と反比例するようにナオは動けなくなってしまう。これまで感情移入してきたナオには幸せになって貰いたいと思う反面、一歩踏み出そうとする素直を応援したい思いもある。

素直の幸福を願いながらも自身の幸福を願ってしまうレプリカのナオも同じジレンマを抱えていることだろう。存在が不確かで中途半端なもの故になんとも理不尽でやるせない。

そして文化祭の前巻に続き修学旅行の今作。これまでみたくレプリカが体験する初めての修学旅行とはならず、登校するようになった素直本人の参加となる。かと思いきや、ナオは同じレプリカであるアキと2人きりの修学旅行に出かけることとなる。素直視点の京都旅行と、ナオ視点の富士宮旅行。どちらの風景描写もしつこいまでに高解像度で細やかに描かれていて、これにはきっと地元民も大満足に違いない。

ネタバレ込みの感想

公式の紹介文にも記されていた通り、本作は遂に今まてあやふやにされていた「レプリカ」という存在そのものに深く触れられている。これがなかなかに衝撃的で読み終えた今でも作品対する戸惑いが拭いきれない。

そんな驚きの追加ルール・条件等の情報を自分の解釈を交え以下にまとめてみた。

レプリカが認識される条件

  • オリジナルとレプリカは互いを認識できる
  • オリジナルがいない時、第三者はレプリカを認識できる
  • レプリカがいない時、第三者はオリジナルを認識できる
  • オリジナルとレプリカが同じ場所に存在する時、第三者はオリジナルを認識できる
  • オリジナルとレプリカが同じ場所に存在する時、第三者はレプリカを認識できない
  • 第三者がいる時、オリジナルとレプリカは互いを認識できる
  • オリジナルとレプリカが同じ場所に複数組存在する時、全てのオリジナルは自身のレプリカ以外を認識できない
  • 第三者と複数組のオリジナルとレプリカが同じ場所に存在する時、第三者は全てのレプリカを認識できない

オリジナルとレプリカが別々の場所に存在した場合、別のオリジナルを含めた第三者はレプリカの存在を認識することができる。しかし、オリジナルとレプリカが一ヶ所に同居してしまうと、レプリカは第三者から認識できなくなってしまう。その時に、レプリカを認識できるのはオリジナルと別のレプリカとなる。

これらの現象は、レプリカがオリジナルの認識可能な層(世界?)と認識不可能な層を移動しているからであり、オリジナルの意思や第三者の存在が移動のトリガーとなってレプリカの移動が行われる(という解釈でいいのだろうか?)。

さらに、レプリカは誕生の際にオリジナルの内面の一部を抜き取って生み出される(素直とナオの場合は優しさ)。抜き取った一部が原動力となり、レプリカの内面が形成される。オリジナルとレプリカの人格が異なるのは、元は一つだった内面の一部が切り離されてしまったから(ではないだろうか?)。

・・・・・・色々と情報が追加されたはいいが余計によくわからない存在になった気がする。神秘性で許容されていた「すこしふしぎ」な作品が中途半端に「サイエンスフィクション」へと傾いてしまい困惑してしまう。結局なんでナオが消滅しかけたのかも明かされないままで終わってしまったし。それらのハッキリしない部分は全て次に持ち越しということなのだろうか。

ナオがどのような決断を下すのか。そして物語はどのような結末を迎えるのか。次巻の展開に期待したいところだ。


◯書籍情報
作名・『レプリカだって、恋をする。3 』
著者・榛名丼
イラスト・raemz
販売元・株式会社KADOKAWA
発売日・2023年12月8日
定価価格・720円(税別)
形態・文庫本
判型・A6判
ページ数・280
ISBN・9784049153439
「レプリカだって、恋をする。3」榛名丼[電撃文庫]|KADOKAWAオフィシャルサイ
(https://www.kadokawa.co.jp/product/322306000870/)

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