今月の読書報告〜7月〜

書籍
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今月読んだ本
  • ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 II(松岡圭祐)
  • クジラアタマの王様(伊坂幸太郎)
  • 結婚するって、本当ですか 7巻(若木民喜)

①écriture 新人作家・杉浦李奈の推論 II

先月1作目を読んですぐ買ってきた。

推理小説協会の懇親会に参加したラノベ作家・杉浦李奈は、会場で売れっ子の汰柱桃蔵と知り合う。後日、打ち合わせでKADOKAWAを訪れた李奈は、その汰柱が行方不明になっていることを知る。手がかりとなるのは、1週間後に発売されるという汰柱の書いた単行本。その内容は、実際に起きた女児失踪事件の当事者しか知りえないものだった。偶然の一致か。それとも……。本を頼りに真相に迫る、ビブリオミステリ!

出典:『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論 II』裏表紙

前作の岩崎翔吾騒動の後の話。人間として逞しくなった李奈が次に直面するのは売れっ子作家の失踪、そして過去に発生した女児失踪事件。これまで以上に不可解でショッキングな事件に対し、李奈は持ち前の読解力と考察力で真相に迫って行く。

今回も出版業・作家業のネタが大変にマニアックで興味深い。一般の読者は作家さんのサイン本を書店側がどう思っているのか知らないし、作家さんが書店のバックヤードでPOP作りをしているのも知らない。そもそも編集プロダクションという会社の存在すら本書を読むまで知らなかった。界隈のあるあるネタ、闇の風習、謎の慣例、とにかくマニアックな業界ネタが至る所に散りばめられている。その上、今作の事件は前作以上に出版業界との関係が深いこともあり、業界に携わる方々も思わずニッコリな事だろう。かと言って一般人バイバイという訳ではなく、むしろ業界の裏側を知る事で知的好奇心を大いに満たすことができるだろう。

また、前回と同様に純文学ネタも健在で、作中でも数多くの作家名とその著書名が至る所で挙げられる。正に「ビブリオミステリ」のキャッチフレーズに相応しい。特に物語の鍵を握っている作品は、横溝正史の『悪霊島』と松本清張の『疑惑』、そしてルソー『告白』の3冊になる。読書不足の僕は当然未読だからネタが一切わからなかったが、本書を通して有名作家とその著書のことを知るキッカケとなった。こういった点も知的好奇心を刺激されて非常に良い。

とにかく、次回作の『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論 III クローズド・サークル』も見逃せない。

②クジラアタマの王様

本書の感想は既に過去の記事で語っているので、詳細はこちらから↓

③結婚するって、本当ですか 7巻

『結婚するって、本当ですか』。今回買ったのは7月発売されたばかりの7巻になる。作者は『神のみぞ知るセカイ』でお馴染みの若木民喜先生だ。

『結婚するって、本当ですか』 若木民喜 | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館
若木民喜「結婚するって、本当ですか」の作品詳細ページです。

今作のテーマは何と言っても「結婚」。都内旅行会社に務める独身の男女・大原拓也と本成寺莉香が、シベリア転勤辞令を避けるため、偽りの夫婦を演じる所から物語が始まる。そもそもシベリア転勤を避ける理由というのが、お互いの生活を守るためであった。しかし、偽り夫婦を演じている中で相手の良いところ、普段見ることのなかった表情を知り、お互いの気持ちは嘘から本当のものへと変わって行くのであった。

ざっくりとそんな感じのストーリーだが、独身の男女の気持ちと感情の変遷に触れることで、結婚とはなんなのか、生活が1人から2人になるとどうなるのかなど、読み手が未婚・既婚に関わらず考えさせられる事が多い作品となっている。それに加え、若木先生のイラストもいい感じにマッチしている。キャラクターの変わりゆく感情の機微が、コミカルに明るく表現されている、気がする。

今回発売された7巻ともなると拓也と莉香の関係はかなり進展しているし、何んなら既に本物の夫婦にもなっている。で、最新刊となる7巻では更にお互いの関係を深めるべくあたふたしている様が描かれている。掲載雑誌が青年誌という事もありそれなりに大人なシーンがあるのかと思いきや、今のところ特にそんな事もなく、不器用な男女の様がコレまたコミカルで可愛い。

うぶな結婚生活の話だけではない。結婚ともなれば両親のご挨拶は欠かせない。拓也は莉香を連れて熊本へ帰省し、実家の家族へ報告と挨拶をすることになるが、そこには足を骨折した祖母と、祖母の面倒を見る父がいた。主人公たち2人の「家族」と実家の「家族」。父と子、そして母と子。関係性は違えど、別の視点で語られる家族感が、いい感じに主人公たちとの対比となっており、読み手は「家族とは何なのか」と深く考えさせられる。衰えていく親の姿と将来のこと。どうしても目を逸らしてしまいがちだが、こうやって漫画で提示されると流石に考えずにはいられない。

これまで以上に「夫婦」のことを、そしてその先にある「家族」のことを考え、学べる良い1冊だった。7巻発売と同時に発表されたドラマ版と合わせて、今後の展開に期待したい。

まとめ

最近、紙の本の良さが分かってきた気がする。
なんかこう、「読んでいる感」が電子と比べて圧倒的に高い気がするし。今読んでいるページが全体の何割の位置になのか、というのもあるが、やはり手で持った時の感触や重みがそう思わせているからなのだろう。電子だと読む文章は違えど、使っている端末は同じだからか、別の本を「読んでいる感」が不足しているように感じる。
また、形として残るか残らないかといった、「読み終えた感」にも影響しているのだろう。本棚に挟まり、積み上がっていく視覚的な満足感が作用しているのかもしれない。
あと「読まないといけない感」が実態があることで強く働くのも大きい。Kindleだとついついライブラリに溜まってしまったまま読まない事が多々あるが、紙の本だとそうはいかない。データと書籍、同じ価格だったとしても、どうしても脳内で価値観がバクってしまう。書店で現金を払って買った分は元を取らねば、という気持ちが働く。
これまであまり深く考えてなかったが、紙の本もまだまだ捨てたものではない様だ。

こうなると年間契約しているKindle Unlimitedが少し勿体なく思えてくる。むしろ最近はKindleでも新書を買うようになったから、余計に意味がなくなっているように思える。
もう少し有効的な利用方を考えなくてはならない、と思う1ヶ月だった。

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以上、ありがとうございました。

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