※忙しい人はコチラから
お疲れ様です、manjiです!
先日、界隈で話題のライトノベル『人外教室の人間嫌い教師』を読み終えました。
こちらはなんと、あの大手バーチャルYouTuberグループにじさんじの来栖夏芽さんが初めて筆を取った作品なのである。
Vtuberが本を出版するということで界隈では大きな話題となった作品だ。
その話題性は凄まじく、現在(3月23日時点)既に2回目の重版が決定したとのことで、業界でも正真正銘の大人気作品だといえるだろう。
元々、僕が応援している数少ないVtuberさんだったという事もあり、ご本人の配信にて告知された時から注目していた。夏芽さんの持つプロ顔負けの創作センスで描かれる商業作品がどのような物なのかという期待も大きかった。
ただ問題が1つあり、僕自身が「ラノベを20年ぶりに読む30代オッサン」という不安要素があった。「買って読んでみたもののあまり理解出来ませんでした」なんてことではあまりにも情けない。
しかし読んでみれば全くそんなことは無かった。むしろ色々発見もあったし大満足だった。
今回は『人外教室の人間嫌い教師』が如何に30代オッサンでも楽しめるのか。
そして、20年ぶりに読んだラノベが如何に読みやすいものだったのか。
以上2つの目線により、本書を読んだ感想を4つに分けて述べさせてもらう。
あくまで感想なので、著者についての情報や物語の解説については省かせていただく。
どんな物語?
感想を述べる前に、先ずは本書がどのような物語であるかをご紹介させてもらう。未読の方・本書のことを知らない方がいるかもしれない。
といっても、僕が語るよりもMF文庫公式紹介文の方が遥かに正確だろう。
なので本書を知らない方は、先ず公式ページを見て頂きたい。
要するに
「人間嫌いのニート教師・人間零が再就職したのは「人外が人間になるための女子校」で、クセの強い人外女子たちと共に「人間」を学んでいく学園物」
そんな物語である。
①キャラが魅力的
「大概のラノベ作品はそういうものだ」という身も蓋もないツッコミが飛んで来そうであるが、ちょっと待ってほしい。
本書のキャラクター、特に4人のヒロインたちがなぜ魅力的であるか。
それは各キャラクターが持つ豊富な設定によるものでなく、本書の作り方そのものが魅力に大きく関係している。
その理由を以下にまとめた。
かわいい雰囲気に隠されたヒューマンドラマ
本書のジャンルは公式サイトにも書かれている通り「学園ヒューマンドラマ」となっている。
決して先生と生徒の恋愛による「ラブコメディ」ではない。先生と生徒の成長を描く、正真正銘の「ヒューマンドラマ」である。
女性比率の高い表紙のラノベを見てラブコメ的な物語を想像した人は少なくないだろう。僕がそうだった。
しかしその実態は、
とある悩みを抱えた先生とそれぞれの目的を持つ4人の人外ヒロインの「学園群像劇」なのである。
この時点でもう他のラノベとは少し違った作品であることが分かっていただけただろう。
群像劇ならではのキャラクターの見せ方
群像劇である本書は各ヒロインの魅せ方・印象付けが非常に上手い。
先ず本書ではラブコメのような「勝ちヒロイン・負けヒロイン」といった概念が無いため、キャラ人気による格差がほとんど無いようになっている。(各ヒロインの成績・能力や、最終的に誰が人間になれる・なれないといった格差はあるが、キャラ人気にはあまり関係が無いだろう)
また、本書は基本的に先生の一人称視点で描かれているが、各章でそれぞれのヒロインの主役回を描くオムニバス形式に近い構成になっている。
この方法により、4人が平等にメインヒロインとして描かれているため、しっかりと印象に残りやすくなる様に作られてている。
どのキャラもそれぞれの苦悩を抱えており、それを先生と共に乗り越えることによって人間として成長していく。これにより「見た目」と「設定」だけしか知らなかったキャラクターに深い愛着を持つ事ができ、最後には4人全員「推しキャラ」として読み進めることが出来るのである。
そう、本書を読めばもれなく『人外教室』という“箱推し”になれるのである。
オンリーワンの個性を持つキャラの魅力
なんといってもこの作品、どのキャラも非常に“濃い”。理由はキャラ1人1人の設定の多さにある。
性格・容姿といったキャラクターとしての設定が多いのは確かだが、基本としてメインヒロイン全員人間では無い。各ヒロインの種族が全て異なっており(人魚・人狼・ウサギ・鳥)、種族に関連した特徴や出自が設定に上乗せされている。
そしてさらには、人外→人間になるための目的もヒロインによって異なるため、目的に伴った過去や苦悩が設定として加わってくる。目的については特に明確に描かれており、キャラのバックボーンを表現する上でも重要な要素となっている。
メインヒロインの1人である『水月鏡花』を具体例とすると
・お嬢様キャラ・社交的・青髪ロング・マシンガントーク・ポジティブ・人魚族・海神ポセイドン一族の末裔・ダンス下手・目的:ダンスがしたいから
以上のように設定が盛り盛りである。後半の種族・出自・目的のところは本書ならではの設定で、物語に大きく関わってくる部分である。
ちなみにこういった設定盛り盛りキャラが後3人もいるのだ。
本書を弁当で例えるなら「ハンバーグと唐揚げと焼き鮭と豚カツの詰め合わせ弁当」となるだろう。そのぐらい“濃い”。
しかし、アニメ・マンガのキャラが溢れかえった昨今のエンタメ業界において、そのくらいの設定量の方が却って魅力的で印象に残りやすいのかもしれない。
おかげでオッサンでもヒロインを覚えやすくなっているのも確かだ。
以上のように本書は、平等に愛着を持てる上に、記憶に残りやすいキャラクター表現がされているのである。
②とても読みやすい
これについても「大概のラノベ作品はそういうものだ」というツッコミが飛んで来そうである。
この点については、最近のラノベを知らないので何とも言えないところだ。
なのであくまでも僕の読書歴からなる感想としてご理解いただきたい。
読みやすい理由
- 一人称視点
- 程よく改行されている
- 小難しい言い回しが無い
- 若年層のネットユーザーに伝わりやすい表現が多い
- キャラの数が多すぎず全員キャラが立っている
- 作品特有の固有名詞が難しくない
- 魔法でなんとかなっている設定が多いので何となくのノリで読み進められる
解説
一人称視点・改行・難しい言い回しについては、僕のように小説慣れしてない人間にとっては受け入れやすい方法だったと言える。
適度なキャラ数という点においても30代オッサンには嬉しい設定だった。
文章を読む上での読みやすさも大事だが、本書は難解な世界設定や固有名詞が少ない。
また、細かい設定については魔法を使用する事でどうにかなっているが、それが逆に良かったりする。
例えば、若干説明が不足していたり、理解出来ない箇所があったとする。そんな時でも「まあ魔法でなんとかなっているから」という何となくのノリで読み進めて行くことが出来るのだ。
読みやすいという事は?
本書の持つ「読みやすい」というメリットは、現代のエンタメ作品においては強力な武器となっているだろう。
特に昨今の娯楽の多様化によって、新たな可処分時間の捻出するのに悩む現代人が多いのではないだろうか。そんな彼らにとっては喜ばしい要素なのだといえる。
今では皆当たり前にスマホを持っており、本や電子書籍を読む時間よりも、スマホで動画やSNSを眺めている時間の方が多いことだろう。
現に30代の僕だって、本で読む文章よりも、SNSで読む文章の方が時間・文章量共に多い。
そんな僕の様な読書離れをした男でも、本書をテンポ良く読み進められた上に、この独特な世界観の中に没入することが出来た。
もし話題となった本書のことが気になっているという人は、何も問題なく本書を読んで頂きたい。
そして、本書を誰かに推めたいと思っている人は、前述した読みやすさの理由について説明した上で推めてあげて欲しい。
③人間を目指す人外の描き方
本書を読んでいて「この表現は丁寧だな」と思うところがある。それは上級クラスと下級クラスの習熟度の違いについての表し方である。
クラス別の習熟度について
本書は人外キャラをメインに扱った物語となっており、メインヒロインの4人は人間としての習熟度が高い上級クラスに属している。この上級クラスの人間らしい所作について、特に丁寧でわかりやすかった。
普通の小説なら当たり前の人間的所作であるため、そこまで注目して読むところでは無いだろう。人間が人間してて違和感なんてある訳がない。
しかし生徒達は皆人外。生徒の総数は不明だが、人間らしく振る舞える生徒の方が珍しいのだろう。
本書ではその設定を再認識させてくれるかの様に、メインヒロインの所作に対して下級クラスの未熟な所作を例に挙げることで、本来不自然である上級クラスの高い習熟度を表現している。
これにより、上級クラスの生徒が如何に優秀であるかを明確に表現している。
そして何より、この表現がある事で、彼女達が人外キャラであるという意識付けを促している。
そもそもイラストで見る限りほとんど人間と変わらない姿をしている上、下級クラスの普段の様子だってわからない。
気を緩めて読んでいると、人外の設定を忘れたまま普通に読み飛ばしてしまいかねない。
一見くどい様に見えるが、『彼女達が極めて人間に近い人外』である事を再認識できる丁寧な表現となっているのである。著者の初出版作品とは思えない素晴らしい配慮といえる。
④その他気になった点
- 先生の一人称視点だった語りが、突然別の視点に切り替わるシーンがあり、一瞬混乱した。
- 卒業の時に壺の設定がどうなるかと思っていたが、特に何も無かった。
- サブキャラも魅力的だったが少し持て余し気味に思えた。
特にサブキャラについては、もう少し掘り下げがあれば尚良かった。
しかし本書は所謂ライトノベル。どうしても収められる尺の問題もあり、もしかすると描ききれない物語があったのかもしれない。
この点については「あとがき」でも触れられていたが、著者・編集の両者に相当の苦心があった事が窺える。
まとめ
これまで『人外教室の人間嫌い教師』を読んだ感想を長々と書き連ねてきたのだが、ここでもう一度本書の素晴らしかった点を整理してみよう。
人外教室の人間嫌い教師 ヒトマ先生、私たちに人間を教えてくれますか……?【電子特典付き】 Kindle版
人間関係にトラウマを持つアラサーニート・人間零。そんな俺が、山中にある自然豊かな学校に転職をして、のんびりとリハビリ教師生活を送ろうと思ったら――なんとそこは人外が人間になるための女子校だった!?
人魚族の水月鏡花、人狼の尾々守一咲、ウサギの右左美彗、鳥の羽根田トバリ……そんな不思議な生徒たちと過ごす日々。何故人間になりたいのか、人間になって何をしたいのか――俺は彼女たちを通じて「人間」を学んでいく。
これは、異世界ファンタジーでも、人生やり直し転生でもない。少し変わった学校で、人間を目指す人外女子たちと送る、ただの教師の物語だ。
MF文庫Jの新文芸から、人ならざる女子たちによる学園ヒューマンドラマが今、幕を開ける!
【電子特典付き】
Amazon.co.jp より
おまけ:人外教室上級クラス最強ヒロインtier表
はじめに
・このランキング(tier/ティア)及び評価につきましては、当ブログ筆者の独断と偏見によって評価されたものであり、公式によって明言されたものではございません。あくまでもネタです。
・このランキング(tier/ティア)及び評価を参考とした場合に発生したトラブル等につきましては、全て自己責任でお願いいたします。
最強ヒロイン早見表
Sランク/tier1
水月 鏡花 |
---|
種族:人魚族 |
目的:「ダンスがしたい」 |
・ポセイドン一族の末裔。プライドの高いお嬢様だが、明るく人当たりの良いムードメーカー。 ・ダンスが好きだがダンス下手であり、お嬢様キャラなのに隙のある所が◎ ・何を隠そう、僕はこういった「下々の者にも優しいコテコテなお嬢様口調系のキャラ」に目がない。 |
羽根田 トバリ |
---|
種族:鳥(百舌鳥) |
目的:「音楽をしたい」 |
・派手な髪と着崩した服装がなんとも不良っぽいが、実は良い娘でクラスのまとめ役。 ・クラスの中では1番人間性が高く、なんでも卒なくこなせる優等生。 ・「活発で元気なデコ出しキャラ」個人的な好みで恐縮だが、陰キャな僕はこういう娘に惹かれてしまう。 |
右左美 彗 |
---|
種族:ウサギ |
目的:「お世話になった人間に恩返しがしたい」 |
・誰よりも目的意識が高いためか、 自分だけではなく他人にも厳しい性格で人当たりが強い。 ・義理人情に厚く、律儀なところがある。 ・あまり大きな声では言えないが僕は 「見た目は幼いが気が強く芯のある娘」にめっぽう弱い。デレに期待である。 |
尾々守 一咲 |
---|
種族:オオカミ(人狼) |
目的:「人狼という中途半端な存在じゃなくなりたい」 |
・長く伸びたモフモフなおさげと赤い眼鏡が特徴的。 ・物静かで気が弱く、他生徒の後ろに隠れがちだが、胸内に強い何かを秘めている。 ・「眼鏡文学少女」といえば古典的で古びた属性に思えるが、 僕にはどうしても眼で追ってしまうほど輝いて見える。 ※ネタバレを含むため『イサキ』は省略 |
Aランク/tier2
該当無し
Bランク/tier3
該当無し
Cランク/tier4
該当無し
Dランク/tier5
該当無し
まとめのまとめ
如何にこの『人外教室』が素晴らしい作品であるか、そしてヒロイン全員を推せる理由をわかって頂けただろうか。
Twitterに上がっている感想ツイートを読んでいる限り、そこまで詳しい解説は必要無いと思ったので、今回は僕自身の感じた思いを100%語らせて頂いた。
ここまで自分の好きなことを書き連ねていけるというのは中々に気持ちが良い事だ。
もし本書を知らない方がこの記事を見たとしても、手に取って読んでもらえるかどうか怪しい限りである。それでも、ほんの少しでも『人外教室』の事を認知してもらえるキッカケになることを切に願う。
人外教室の人間嫌い教師 ヒトマ先生、私たちに人間を教えてくれますか……?【電子特典付き】 Kindle版
人間関係にトラウマを持つアラサーニート・人間零。そんな俺が、山中にある自然豊かな学校に転職をして、のんびりとリハビリ教師生活を送ろうと思ったら――なんとそこは人外が人間になるための女子校だった!?
人魚族の水月鏡花、人狼の尾々守一咲、ウサギの右左美彗、鳥の羽根田トバリ……そんな不思議な生徒たちと過ごす日々。何故人間になりたいのか、人間になって何をしたいのか――俺は彼女たちを通じて「人間」を学んでいく。
これは、異世界ファンタジーでも、人生やり直し転生でもない。少し変わった学校で、人間を目指す人外女子たちと送る、ただの教師の物語だ。
MF文庫Jの新文芸から、人ならざる女子たちによる学園ヒューマンドラマが今、幕を開ける!
【電子特典付き】
Amazon.co.jp より
以上、最後まで読んで頂きありがとうございました!
コメント