一作品読み終えたので今回も読書感想文を書く。
今回読んだのはこちら
こちらは昨年夏に出版された『朝比奈さんの弁当食べたい』の続編に当たる。
そのタイトルから想像不可能なハード設定は、読者の期待をいい意味で裏切る結果となり話題を読んだ。今年2月に連載されたコミカライズ版は現在も連載中。勢いそのままに、原作第2巻の今作が発売され現在に至る。「まさか続きが有るとは・・・」と思った前作読者は、きっと僕だけではない筈。
そんな今作の感想を以下にまとめてみる。
ざっくりとしたあらすじ
晴れて恋人同士となった朝比奈 亜梨沙と牧 誠也。亜梨沙が父と暮らすためアメリカへ渡った以降も、誠也との関係は変わらない。2人が会えない距離で関係を育む一方、後輩の角南 結衣の誠也へ対する想いも変わっていなかった。
結衣にとって、弁当は足枷だった。
結衣の日常は3年前から変わらない。朝、親への弁当を作る家。昼、同級生と過ごす教室と先輩たちと過ごす視聴覚室。夜、お客様と恋人となるバイト先。
3年前から続く日常の記憶が、紫煙とともに思い起こされる・・・。
感想 ※ネタバレ有り
これまで以上にハードでしんどかった。
しかし、なぜか読む勢いは止まらない。のめり込み過ぎて気づけば1日で読了してしまうほど面白い作品だった。
前作のサブキャラの深掘りをしつつ、恋人となった前作メインキャラ2人の進展を描く今作。ナンバリング作品でありながら外伝的な作りでありながら、しっかりと「なにか」が起こる物語展開。ラブコメラノベな体裁をとりつつも、ラノベでは珍しく児童売春や育児放棄といった現代日本に潜むセンシティブネタをテーマとして扱っている。しかし、全編通して暗い展開という訳ではなく、一応学園モノのラノベというだけあって青臭い青春模様もしっかり描かれており、暗さを幾分か中和しているようにも読めた。また、これまで以上にセンシティブさ・ハードさが生々しくなっており、前作で意図的に濁していた表現が直接的なものに置き変わっている。しかし、その分メッセージ性も高く、読む者を惹きつけ、訴えかけ、考えさせるような作品となっている。そして、次巻への続きを匂わせる締め方も憎い。今後予測される重い展開に胃が痛くなりそうな締めは、初見さんなら2度見間違いなしである。
上のあらすじの通り、今作は誠也の後輩でもあり同業者でもある角南結衣が中心の物語となる。前作では誠也への想いをオープンに語っておきながら、亜梨沙との関係を応援するに終始しており、時には発破を掛け、時には強く背中を押すという、ラブコメのサブキャラとして申し分の無いキャラクターであった。さながらピエロのように読めない結衣の本心が、重く暗い過去と共に語られることになる。前作ではその実態がぼやかされていた「バイト」の正体が実はガチの風俗仕事だったり、それなりにガチムチ♂が客がやって来るお店だったり、そこで働かなくてはならなくなった結衣も実は誠也と似た境遇によるものだったり、誠也の想いが結衣に傾かないのは過去に交わした約束のせいだったり・・・。頼むからラノベらしくキャッキャウフフしててくれと思ったのは1度だけではない。
あとがきによると、今作は前作の「あえて大事なことを言葉にする」というコンセプトとの「対比」を意識して作られたそうだ。確かに人物と対比して見た場合、関係性が無い・境遇が違う・住む世界が違う2人が結ばれる物語の前作とでは作りが違う様に感じる。例えば、ラブレターの様な直接的なアプローチのほか、屋上に呼び出して告白したり、“弁当”の示す意味を読者にも分かるように表現したりと、視点が亜梨沙であることに寄り添った作りである様に読み取れた。一方、今作はどうだろうか。関係性が長くて濃い・境遇が似ている・住む世界が似ている2人がメインの物語なだけあって、行間を読まなければ理解できないような部分は多かったかもしれない。後半かなり直接的な発言をしてはいるが、それまでの行動が発言と食い違っていたり(キスしたのに告白を断ったりするアレ)、そもそも誠也の「好き」が指す意味があやふやだったりと、無理矢理当てはめてみれば対比となる要素は見つからないでもない。僕の低い読書能力ではこれくらいしか分からなかったので感想はこのくらいにしておく。後でネットに上がってる感想を読んで補完しておこう。
まとめ
・これまで以上にハードでセンシティブな辛い内容
・それでも引き込まれてゆく中毒性がある
感想にもある通り、かなり直接的な表現が強めなので慣れてない人は要注意。
前作を読んだファン、コミカライズ版の続きが気になる読者なら大満足間違いないしだ。
さて、僕はこれから読書メーターで感想を漁りにいくが、みんなは今作を読んで自分だけの感想・解釈を持とう。そして気軽にネットに晒していこうな。
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優等生な朝比奈さんと世間的には不良な誠也は、日本とアメリカという遠距離ながら交流を続け、さらに仲を深めていた。一方、誠也の後輩である結衣は大好きな先輩が幸せに向かう姿を喜びながらも、彼の幸せと自身の想いの板挟みにあっていた。そこには、過去に結衣が誠也と交わした、ある約束も関わっており――三者
三様の『今』と『過去』が絡み合い、歪で美しい青春を紡ぎだす。
「私のことを、絶対に好きにならないで」
不器用な彼らの贈る学園青春物語第二幕、開演。
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