オーディブル版『同志少女よ、敵を撃て』の感想

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今回もオーディブルで一冊聞き終えたので、その感想をまとめる。

作品は逢坂冬馬=著『同志少女よ、敵を撃て』である。

アガサ・クリスティー賞受賞をはじめ、2022年本屋大賞並びに高校生直記賞を受賞と、華々しい栄誉を次々と獲得。ロシアによるウクライナ侵攻によって関心が高まったこともあり、2022年はとにかく売れに売れまくった。
ここまで人気なら絶対にハズレな訳がない。絶対に面白いに決まっている。そうなると逆張りをせずにはいられないのが僕である。

そんな折、この間から利用を始めたオーディブルなら抵抗なく読めるのではないかという根拠のない自信が湧き、逆張りを解き思い切って聞いてみることにした次第だ。

そんな訳で、今回も読んだ(聞いた)本の紹介と感想をまとめていこう。

『同志少女よ、敵を撃て』の紹介

〜あらすじ〜
時は1942年2月。ソビエト連邦モスクワ郊外にあるイワノフスカヤ村で悲劇と起きる。
狩猟を営む少女・セラフィマは、ドイツ軍兵士により自身の住むイワノフスカヤ村が襲撃される現場を目撃する。同行していた母・エカチェリーナが猟銃で応戦を試みるも、敵狙撃手の放つ銃弾によって、娘の目の前で命を落とす。
セラフィマはソ連赤軍兵士によって救出されるも、イワノフスカヤ村の住民たちはセラフィマ1人残し惨殺されていた。部隊長・イリーナの指示によって、エカチェリーナ諸共村の全てを焼却する「焦土作戦」を実行される。焦燥し切ったセラフィマは、愛する母と家を燃やした張本人・イリーナに問いかけられる。

「お前は戦うのか、死ぬのか。」

母を撃った敵狙撃手、そして母と家を焼いたイリーナへ復讐のため、セラフィマは自身の意思で戦うことを選択する。
セラフィマはイリーナによって、自身と同様に戦いによって身寄りのない少女達が集められた女性狙撃兵養成校に連れてこられる。かくして、教官にして母の仇であるイリーナによる狙撃兵となるための訓練が始まる。
訓練を終えたセラフィマたち5人の少女は、イリーナを隊長とする第三九独立小隊の狙撃兵として、激しい独ソ戦の最前線に身を投じていくのであった・・・。


著者は、今作で作家デビューを果たした逢坂冬馬さん
先述した通り、本作はデビュー第1作目でありながら華々しい賞を獲得しており、一般読者のみならず業界の人たちからも多くの注目を得ている。

オーディブル版の朗読は、なんとアイドルマスターシンデレラガールズ・多田李衣菜役でお馴染みの声優・青木瑠璃子さんが務める。物語の朗読はもちろんのこと、キャラクターそれぞれの台詞の演じ分けが本当に秀逸である。

本書は第二次世界大戦中のソ連とドイツ争いをテーマとした戦争小説となる。各国の政治体制や時代考証を緻密に描いており、当時のドイツ・ロシアの厳しい独裁体制を物語を通して体感できる。また、戦争によって奪われる側がどの様な目に合うか、如何に戦争が虚しいものなのか、女性主人公の視点からリアルに描かれている点も見逃せない。

『同志少女よ、敵を撃て』の感想[ネタバレ有り]

教え子(年下)×教官(年上+上官+仇敵)の百合小説か〜!!

それは気付かんかったわ。

女性同士のキスは、ロシア人にとって友人にする挨拶であり、特に珍しくもない

出典:同志少女よ、敵を撃て(オーディブル版)|第二章より

そっか、ロシアでは女子通しのキスは普通なんか〜。それは知らんかったわ。

いやね、お人形にたいな顔立ちの狙撃手・シャルロッテと急にイチャつきだした時はおかしいと思ったよ。血と硝煙と、ほんの少しのシャンプーの匂いのする硬派な作品と思って聞いてたものだから、流石女子通しのキスが始まった時は面食らったよね。
まあロシア特有の文化なら仕方ない。百合だと思った僕の心が薄汚れてただけだ。

と思ったら終盤にそれはやってくる。

出会った時から復讐の対象としか見てなかったイリーナが時折見せる優しさ。
自分を死地に誘った張本人のはずなのに、どうして優しくするのか。
出会いの時から隠していたある事実が暴かれた揺らぐセラフィマの心。
そして最終決戦。
仇撃ちを成し遂げたセラフィマを、もう1人の仇であるイリーナが駆け寄り、優しく抱き寄せる。
そして、締めの「二人は幸せなキスをして終了」。

はい、硬派ではございません!!完全にやってます!

その後、お互いに歳を取った2人が復興したイワノフスカヤ村で寄り添い暮らすという100点満点なエピローグで物語を結ぶ。百合作品としての芸術性もアガサ・クリスティー賞レベルに仕上がっている。

硬派な戦争小説だと思い侮っていたが、この作品は本当にすごい。なぜこの小説が売れまくったかよーく分かった。やっぱなんだかんだ言ってみんな百合が好きなんですね。

まとめ

今回はオーディブル版『同志少女よ、敵を撃て』の紹介と本音多めの感想をまとめてみた。

読書好きなら今更読んだことのない人は居ないだろうと思うが、今回は思いがけぬ百合展開につい嬉しくなってしまい、勢いに任せて思い切って記事にすることにした。

僕のような未読で百合豚ユーザーは超必見なので、気になった方は↓のリンクか聞いてみて欲しい。

同志少女よ、敵を撃て Audible版

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?

Amazon.co.jp より

以上、ありがとうございました。

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