コーヒー派が『仕事と人生に効く 教養としての紅茶』を読んだら思いの外学びが多かった件

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藤枝理子・著『仕事と人生に効く 教養としての紅茶』を読んだ。

コーヒー派の僕にとって最も縁遠い「紅茶」という存在。普段、スーパーや喫茶店で見かけても一切興味の湧かない対象だったが、書店で見かけた「紅茶」の文字にはいつにもなく魅力を感じた。
そんな訳で手に取ったのが本書である。
「『人生に効く』は誇張し過ぎだろ」と思いつつも、人生の中間に差し掛かってきた今、無関心だった紅茶について造詣を深めることで、今まで見えなかった新たな発見があるのではないか。また、紅茶派の妻のことを今よりも知れるのではないか。それらの期待が、本書を読むモチベーションと変わった。

そんなわけで、本書から得た学びと気づきを以下にざっくりとまとめてみる。

本書について

馴染みの深い日本茶を入り口に、茶道の本質についての解説を経て、徐々に紅茶の魅力について触れていく流れとなっている。この流れがとても自然であり、そもそも茶に馴染みのない僕には受け入れやすかった。イメージしやすい対象から本題へ広げていく技術こそ「茶道」の技なのかもしれない。

内容としては、基本的な茶の在り方や効能のほか、茶の起源から現代までの発展の成り立ち、各国の茶文化についてなど、一般教養書としても差し支えないほどにしっかりとしている。
いかにも「紅茶をダイレクトマーケティングするための本」というタイトルではあるが、読んでみると全くそんなことがない。むしろ「教養に見せかけたステルスマーケティングのための本」である。

帯にも書かれてあった通り、確かに紅茶を飲んでみたくなる魔力がある。この著者は相当なやり手に違いない。

緑茶・烏龍茶・紅茶は同じ葉から生まれた?

この事実こそ、本書から得た最大の収穫だったと言える。
皆さま知ってました?僕は全く知りませんでした。

そもそもお茶は、茶葉から成分とか色素とかを抽出して出来上がる飲み物である、というのは僕も何となく分かってた。茶畑で摘まれた葉がなんやかんやあって小さく乾燥され、茶筒とかの容器に詰められ、緑茶として販売されているのは想像できる。きっと他の茶の葉も似たような感じでパッケージされているはずだ。

では茶畑で栽培されてるのは何なのか。
それが茶の親的存在「チャの木」である。中国やインドなど、産地によって品種や味に違いはあるが、基本的には緑茶も紅茶もチャの木から取られた葉によって淹れられている。
各茶の大きな違いは加工方法にあり、主に生葉の発酵度合いによって茶の種類が変わるとのこと。リンゴを放置すると酸化によって変色するのと同じく、茶葉もチャの木から摘まれた時から酸化発酵が始まる。そして、生葉を完全に発酵させた「全発酵茶」が紅茶となり、熱を加えることで発酵を止めた「不発酵茶」が緑茶となる。そしてその中間の「半発酵茶」が烏龍茶となるのである。

なんと、種類によってはお茶も立派な発酵食品であった。発酵によって作られる飲み物に甘酒があるが、原料と発酵方法は違えど、紅茶も同じく発酵食品の仲間だったのである。この事実を知った時、勝手に上品なイメージを持っていた紅茶が一気に身近な物に感じられた。

ちなみに、麦茶やマテ茶のようなチャの木を由来としないお茶は「茶外茶」や「代用茶」と呼ぶそうだ。

茶の歴史に人の歴史あり

茶の歴史には人の歴史があった。

起源はやはり中国。古くは紀元前の時代より茶は存在しており、当時から既に薬の様な効用が位の高い者からも注目されていた。時代が進み、栽培規模の拡大と製茶方法の発展したことで、一般層の嗜好品へと普及し、貿易の商材として世界に広がった。

横山光輝版・三国志においても茶は高級な存在であり、重病人か高貴な人でないと飲まれなかったと記されている。物語冒頭、劉備は母を喜ばせるため、茶を運ぶ行商人の船を半日待ち続けていた。そのことを聞いた憲兵(?)と行商人は痛く感心している様子であった。当時のお茶はそれ程までに貴重であり、とてもありがたい存在だったのだろう。

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贅沢品であり上流階級に好まれたお茶は、中国から遣唐使などによって日本へ渡る。日本でも上流階級に好まれる高級品であった茶は、次第に生まれてきた作法や製茶法より新たな価値観へと変化し、末は庶民にも愛されるようになる。
そして17世紀。お茶は東インド会社によって長崎からヨーロッパへと渡る。やはり同様に上流階級に好まれる形でお茶文化は受け入れられ、そこでも新たな形式と価値観が生まれる。主に王女、王妃の趣味としてお茶会が模様されれていたが、その華やかな文化は次第に貴族階級へと広がり、茶と金を巡る国内外での争いがありつつも、やがて一般の層へ「ティータイム」が浸透した。

茶が受け入れられた要因を紐解くと、どこの文化圏にも共通して茶の効用に目をつけている。健康意識というのは、これまでの文化・様式を覆すほどの影響力を秘めているものなのか。そう思うと感心してしまう。
上流階級のトレンドだったお茶は一般の人にとっての憧れとなり、やがて人々の「当たり前」へと姿を変える。飲み物だけではなく、服や道具、言葉など、人々の憧れがスタンダードとなる流れだけは、今も昔も変わらないのであった。

作法の奥にある思いやりの心

朝、妻が用意してくれた麦茶を出社して飲む。それが、僕と茶の在り方だ。そこにあるのは妻への感謝の気持ちと、シンプルに水分の補給手段確保ぐらいなものだろう。
それ以外のお茶といえば、畳の上に正座し茶碗を回して飲み「結構なお手前で」と言うイメージであったり、パリッとしたスーツ姿の紳士が高い位置から紅茶を注ぐ、といったステレオタイプのイメージも浮かぶ。

所謂「茶道」や「ティータイム」にある堅さの正体は何なのか。その理由も、本書に記されている。

かつての商人たちは、自信の教養と品格を身につけるために茶の作法を学んでいた。それは貴族のような上位階級を相手との取り引きを行うために必要なものであった。権力者ともなると動かせる金と権力が違う。いくら力を持っていたって、誰彼だって誰彼構わずお金を渡すことはしない。相手の人間性を評価し、安心して仕事を任せられる相手に対して投資を行う。そんな上客に対して「教養のない人」と思われないために、茶を学ぶことで教養と品格を養っているのである。

これは現代のビジネスシーンにも同じことが言える。ビジネスマンであれば、取引先に対して取るべき最低限のマナーが求められてくる。それは、相手を不快にさせないためのものであったり、自信の品格を保つためなどの手段で行われている。それなのに、取引先相手に着崩れた服装で現れたり、間違った敬語を使うなどするのは相手に対して失礼となってしまう。そればかりか、自分だけではなく会社の品性を疑われてしまう事にもなってしまう。いつの時代でも、仕事を有利に進めるためにはマナーやエチケットが欠かせないということだ。

「茶道」や「ティータイム」にて取られる作法の先には必ず相手が存在する。正しい所作の中に、相手を思いやる心が宿る。その心こそ、茶の道の本質がある。のかも知れない。

まとめ

結論:お茶に学ぶことは余りにも多かった。

ここまでで、紅茶と緑茶が元々同じ茶葉であるウンチクであったり、茶の起源と発展の歴史であったりをまとめてきた。この時点でも十分学びがあったし、僕にとって刺激的な経験を詰むことができた。

しかし、ここまでの情報はまだ、本書の半分程度の情報量に過ぎない。これら以外には、各国の茶文化についてであったり、紅茶の選び方・飲み方といった実用的な情報であったりなど、記事では紹介しきれない大ボリュームの内容が記されている。正直、これで1冊2200円(税別)は大満足過ぎる価格だ。

本書で得た知識を糧とし、今まで遠ざけていた紅茶の味に少しずつ触れていきたいと思う。
そして、紅茶好きの妻と新たな時間を育んでいきたいと思う。

以上、ありがとうございました。

仕事と人生に効く 教養としての紅茶 単行本

「紅茶はビジネスエリートが身につけたい総合アート」と称されるように、紅茶の背景には、国ごとに培われてきた文化、芸術、宗教、交易の歴史から、植民地抗争や独立戦争、民族や奴隷問題、政治経済情勢まで、国際人として知っておくべきグローバルな知見が網羅されています。ロンドンの金融シティで活躍するエグゼクティブにとっては、ティータイムが政治や社交、ビジネスの交渉の場としても用いられているほどです。
また、イギリスの紅茶文化であるアフタヌーンティーは、まさに五感で愉しむ「生活芸術」。単に美味しい紅茶とお菓子を味わうグルメではなく、建築様式やインテリア、陶磁器や銀器、カトラリーやリネン、絵画、庭園、音楽などを、トータルで味わう「暮らしの中に息づくアート」といえるでしょう。
本書では、テレビや雑誌等で話題を集める「紅茶の専門家」が、ビジネスに活かせてかつ、生活に彩りをもたらす紅茶の知識と知恵、そして愉しみ方をわかりやすく教えます。さらに教養×人間力を兼ね備えた「バトラー猫」があなたの学びをサポート。歴史、地理、アートを中心に「1ページに3つ以上のインテリジェンス」を提供します。これまで紅茶のことをよく知らなかった方、すぐにできる趣味を探している方、そして紅茶を通して教養を身につけたい方に向けた、古今東西のティーワールドを愉しめる唯一無二の「紅茶エンターテインメント」。

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