オーディブル版『六人の嘘つきな大学生』の感想

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浅倉秋成=著『六人の嘘つきな大学生』オーディブル版を聴き終えた。

こちらは2021年の3月に刊行された作品となっており、『王様のブランチ』によるブランチBOOK大賞2021の受賞のほか、2022年本屋大賞ノミネート等、数々の賞を受賞。
昨年、一昨年を象徴する一冊のひとつだ。

そんな名著間違いなしの本書がオーディオブックとして、Audible(オーディブル)で配信されている。オーディブルなら初月は1ヶ月無料、翌月以降1ヶ月1,500円で『六人の嘘つきな大学生』ほか12万冊以上の作品が聴き放題となる。
以下に本書の紹介と感想をまとめてみたので、是非ご利用の参考にして欲しい。

『六人の嘘つきな大学生』のあらすじ

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。
『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。

出典:六人の嘘つきな大学生|浅倉秋成|KADOKAWA(https://www.kadokawa.co.jp/product/322005000377/)

『六人の嘘つきな大学生』の感想

手のひらが720°くらいひっくり返った。ひっくり返りすぎて手首がネジ切れるかと思ったが、こうやって感想を書き残せる程度の被害で済んだ。
もうそれくらい印象の変化が凄まじい。

なんといっても発想が面白い。グループディスカッションによる選考が、まさかここまで血で血を争う人狼ゲームになるとは・・・。
序盤の最終面接前、波多野と嶌が月を見上げて語る場面がある。初見なこともあり、始まったばかりだというのにいきなり良い感じになる2人に
「一体何を見せられているんだ・・・」
と、唐突に始まるラブコメ展開に困惑させられる。最後まで読み進めてみて、唐突のラブコメ展開での会話そのものがこの作品を表していたとは、まさか思いも寄らなかった。
学生たちのなんて事の無い会話、行動の全てが伏線であり、それらは彼ら、彼女らの内に秘められた内面の1部であったこと。巧みな認知バイアスの操作には、只々脱帽である。

好感度の高い芸能人が1度の淫行のせいで干されることもあれば、1度の善行が過去に重ねたとんでもない悪行を全て無かったことにする。
そんな具合に、1つの悪評がその人の全てかの様に評価されるなんて事は往々にしてあり得るが、本書を読んでると人間の評価なんていい加減なものだとつくづく思い知らされる。
今作のテーマとなる企業の面接こそ、誰かからの評価に最も左右されるタイミングと言えるだろう。評価によって人生が左右されると言っても大袈裟過ぎることはない。そういった場面において、最も分かり易く評価されるのが、服装や言動といった表面上の姿だろう。清潔で整った身なりに、堂々とした立ち振る舞いをしているだけでも、十分に社会人らしい姿に見えるものだ。そこに優れた知性が加わればもう申し分は無い。
しかし、それはあくまで表面上の評価であり、その人の中にある内面までは判断できない。内面を込みにして、真に人を評価するにはどんな方法が適切なのだろうか。本書の最終面接の様に、元々は仲間だったグループメンバーの暗い過去を詳らかにすれば良いのだろうか。例え、どんな噂が流れていたとしても、それがその人の全てではない。
表面上の印象だけで全てを判断してはいけない。そんな教訓を心の中に刻み込む。

オーディブル版ならではの感想として1番評価したいのは、なんといってもナレーターである声優・木村良平さんの演じ分けの素晴らしさを挙げたい。
木村良平さんといえば、男性向け・女性向けアニメだけに留まらず、『トランスフォーマーシリーズ』の様な児童向けアニメ等にも幅広く活躍されている大人気声優である。本書『六人の嘘つきな大学生』で登場する6人の学生はどれも個性的で、尚且つグループディスカッションを行う都合上、人物同士が入り乱れて会話をする場面が多い。
木村さんは6人の学生を、男女関わらず見事に演じ分けており、全く違和感を感じさせない。プロの声優なのだから当たり前なのかも知れないが、物語に没入して聞き入りたい僕にとっては大変ありがたい。

まとめ

今回はオーディブル版『六人の嘘つきな大学生』の紹介と感想をまとめてみた。

やはり数々の賞を獲得しただけあって面白く、本書を選んで大正解だった。
人が表に見せている顔は月の表面のように美しく、その内面は月の裏側のように冷たく醜い。しかし、信じてその内面を深く知れば、決して醜いだけではない、その人の本質に近づくことができる。そんな事を教えてくれる1冊だった。

一味違うミステリーが読みたい方。或いは人間の本質を知りたいと思っている方は超必聴なので、是非↓のリンクから聞いてみて欲しい。

六人の嘘つきな大学生  Audible版 

ここにいる六人全員、とんでもないクズだった。
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。
『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。

Amazon.co.jp より

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