『人外教室の人間嫌い教師2』レビュー

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↑前作の感想はコチラ↑

12月15日。飛ぶ鳥も倒す勢いの大人気ノベル「人外教室の人間嫌い教師」最新刊が発表された。その名も『人外教室の人間嫌い教師3 ヒトマ先生、私たちと未来に進んでくれますか……?』

3巻についてもこれまで同様、豪華絢爛な購入特典が予定されている。それだけではなく、発売日には著者である来栖夏芽さんによる発売記念サイン会の実施も予定されている。更に、発売当日にはコミックス第1巻も同時発売されるとの事。一体どこまで行くんだ「人外教室」。

新刊が出るなら早く読まねばならぬと思い、慌ててKindleライブラリに積まれていた未読の『人外教室の人間嫌い教師2 ヒトマ先生、私たちの希望を見つけてくれますか……?』を引っ張り出してきた次第である。そんなこんなで、現行最新刊である『人外教室2』の感想をざっくりまとめさせて頂く。
乗るしかない、「人外教室」のビッグウェーブ。

ざっくりとした概要

結界によって人の認知から外れた学校「私立不知火学園」。そこに通う生徒は普通の人間ではない。

ダンスに憧れる人魚
音楽に惹かれた百舌鳥
人間に恩返しがしたいウサギ
内なる自分を消したい人狼・・・

そんな夢や願望を持った“人間”に憧れる“人外少女”が数多く在籍している。

そんな彼女たちを導くのはアラサー教師・人間零。担当する上級クラスで新たにドラゴン族の「龍崎カリン」、ネズミの「根津万智」、黒ネコの「黒澤寧々子」の3人を迎えることとなる。

新任早々、1人の生徒を卒業まで導いた人間先生に待ち受けるものは何なのか。
新たな3人の掲げる夢は何なのか。

人間嫌いの先生による2年目の教師生活が始まる。

変わらない作品の魅力

前作終了から数日後の物語となるため、学園のシステムや立地などの舞台設定はそのままに、新キャラを除くほとんどの登場人物が続編となっている。各キャラクターに焦点を当てた学園群像劇的な大筋はもちろん、小説としての読みやすさやとっつき易さ、そして人外キャラの描き方など、作品としての魅力はこれまで通り健在である。

1巻を読んでいる方が世界観に没入しやすく、既に深掘りされた生徒に愛着を持って読み進められる。基本的には得しかないので先に1巻を読んでおくことをオススメする。

大きな見所は続投キャラの成長と変化にある。人間として無垢な人外との1年間を通し、過去の暗い経験により相変わらず人間嫌いである先生の内面はどう変わったか。新たな目標を見つけた右左美と尾々守はどうなっているのか。続編ならではの楽しさを感じてほしい。

また、続編ということもあり、人外の種類や学園の過去についても深く触れられている点も注目である。

しかし、本作から読み始めたとしても全く問題はない。新登場の生徒は皆キャラが濃いし、当番回の物語どれも個性的な上、設定に意外性もあって面白い。もし今作から読み始めたとしても十分に楽しむ事ができるだろう。

人外少女たちの印象

今作も基本的な大筋は変わらず、各章でメインとなるキャラ1人をピックアップした学園群像劇となる。ここでは、今作に登場する人外少女6人についての印象を雑に語ってみることにする。

※以下ネタバレ有り

龍崎 カリン

種族はドラゴン族。人間になりたい理由は「恋を知りたいから」。

お嬢様口調+金髪ドリルという、絵に描いたようなお嬢様キャラ。最近(令和4年現在)なにかと話題になったキャラ属性ということもあり、どういった活躍をするか期待は大きかった。しかし一方で、安易に流行りに乗っかった出オチキャラかという不安な気持ちもあった。そんなカリンだったが、実際に小説を読んでみると見た目以上に濃いキャラであったことが解る。特に、カリンの先生に対する愛の圧は凄まじく、時折彼女のセリフの書かれた行を直視できなかったこともあった。

そんなカリンの人間を志す動機は実にドラゴン族らしい。人間と比べて圧倒的強者であるドラゴンが人間の優しさに触れ、人間同士が惹かれあう姿に憧れを覚えることで「人間と対等になりたい」と思う辺り、かなり「人外教室」らしいと思う。人外キャラの自然な作り込みは今作でも健在だ。

根津 万智

種族はネズミ。人間になりたい理由は「おいしいモノをいっぱい食べたいから」。

ドラゴン族のカリンと同じくセリフのテンションがやたらと高いキャラ。どのキャラも大体語尾で判別できるからとても助かる。トラブルメーカーっぽい見た目ではあるものの、クセの強いキャラの多い今作中ではそこまで問題を起こすキャラではない。妹の千結との絡みが多いせいか、どちらかといえば優しいお姉ちゃんキャラとしての印象が強く残っている。

学園に来る前のエピソードは思いの外ネズミらしい。生と死が隣り合わせの状況下、ネズミである姉妹が命を繋ぐため、必死になってもがく姿をネズミ目線で描かれている。このエピソードが食に貪欲である理由付けとなっており、ネズミの人外としてのキャラ作りに上手く作用している。ここでも夏芽先生のキャラ造形の手腕が光ってる。

当番回の姉妹愛溢れる感想エピソードには不覚にもホロっときてしまったのはここだけの話し。

黒澤 寧々子

ネコの人外少女。人間になりたい理由は「ないしょ」。

見るからに厨二病患者の少女。ネコの人外らしく、言動と行動が非常にマイペース。人間になりたい理由までもが不明なためあらゆる面で謎が多い。

そんな寧々子の謎も、当番回である「人間嫌いと安寧の魔法」では、学園の脱走について黒魔術を小脇に抱える理由などがガッツリ明かされることになる。そればかりか、人間とその他の種族についての説明や寧々子の保護者である「魔女」の登場など、他の章と比べてみても情報量が明らかに多い。その分、寧々子についても深く掘り下げられてはいるのだが、残念なことに寧々子の出番はこの章以降無くなってしまう。

作品全体を通して見ると出番は圧倒的に少ないものの、当番回でのインパクトが大きかったためか、キャラクターの存在感はそこまで薄い訳ではない。作品が長く続けば再登場する可能性は十分にあるだろう。

右左美 彗

元々の姿はウサギの人形の人外少女。人間になりたい理由は「ニンゲンのお医者さんになる」。

続投キャラの1人。人間先生はもちろん、クラスメイトに対してもツンケンしているツンデレ幼女。前作よりか丸くはなっていはいるが、その鋭さはまだまだ健在である。前作で犯した違反行為の影響もあり卒業には至らなかったものの、大切な人と向き合うことで新たな目標を見つけだす事ができた。2巻でも引き続き上級クラスの一員として活躍する。

今作では学園卒業課題と大学試験勉強を同時に取り組んでいる。約1年間で国立大学の医学部を目指すという、人間を超えた行動力を発揮する。

当番回では元の持ち主の所縁のある人物が登場する。人外以外の関連人物とどの様に絡んでいくのか。学園以外の新たな展開にも期待したい。

尾々守 一咲

種族は人狼。前作では「中途半端な存在じゃなくなりたい」という目的を掲げていたが・・・。

普段は大きなおさげ髪とメガネが特徴的な大人しい文学少女〈一咲〉だが、満月の日には活発でお喋り好きな人格〈いさき〉が発現する。二重人格の人狼少女。〈いさき〉を消し去ることが目的であったが、交換日記を用いた人格同士の交流によって〈一咲〉は〈いさき〉を受け入れる。今作では新たな目的を探すために苦悩する姿が描かれる。

なんといっても今作の一咲の良さは人格同士の関係の変化にある。前作では一方的にいさきを忌み嫌っていた一咲。今作では一変し、内なるいさきを良き相談相手として悩みを打ち明ける関係となっている。互いの良いところを認め合い、尊重し合える良好な関係に思わず尊みを禁じ得ない。外伝でも良いから別々の存在となった〈一咲〉と〈いさき〉が並び立つ姿をいつか見てみたい。

羽根田 トバリ

種族は百舌鳥。人間になりたい理由は「音楽がしたいから」。

・・・というのは仮の姿。私立不知火学園の理事長であり、人間・人外を超越した高位な存在「シラヌイ様」こそが本当の姿である。今作でも引き続き上級クラスの生徒として学園の人々を見守り、導いて行く。

前作の最後、人間先生への衝撃的なネタバラシによって幕を閉じた。そんなこともあり、トバリは既に今作冒頭から「シラヌイ様」として登場する。役割としては、新たに上級クラスに昇格した3人の説明から学園の成り立ちなど、主にチュートリアルキャラとしての立ち回りが多い。ステータスが全キャラ中トップの性能を持っていることもあり、『呪術廻戦』における五条先生的ポジションとして人外教室Tearトップに君臨している。

高位の存在ということもありながら、喜怒哀楽に溢れ、苦しみ躓きながらも立ち上がって生きていく人間らしい人生に憧れを抱いていることが語られる。悩みのスケールがハヤタ隊員と一体化したウルトラマンっぽさもあり、如何にも人智を超えた存在らしくて個人的に良い設定だと思う。

まとめ

「人外教室」としての魅力と読み易さはそのままに、世界観の掘り下げと新キャラクターの追加により、深みのある作品へ更なる成長を遂げた。

既に掘り下げの終えた既存キャラについても丁寧に描かれており、新たな魅力が発掘されたことでキャラへの愛着がより強くなり、シリーズファンとしても満足な続編となっている。

2巻の最後で登場することを匂わせていたあのキャラも、第3巻でバッチリ登場することが決定している。人間先生の苦悩と成長を予感させる最新刊『人外教室の人間嫌い教師3 ヒトマ先生、私たちと未来に進んでくれますか……?』は2023年3月25日発売予定なので、みんなは忘れずに予約しよう。そして、みんなは買ったら積んでおかずに直ぐ読もう。

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人外が人間になるための女子校――不知火高校。人間関係にトラウマを持つ俺は、そこで接した人外女子たちを通じて人間を学びながら、無事に1人の卒業生を送り出したのであった。そして今年は新たにドラゴン族の龍崎カリン、ネズミの根津万智、黒ネコの黒澤寧々子を上級クラスに迎える。だがその3人は、昨年までの人外生徒たちよりも問題児ばかりで……?
2年目の人外教室。人ならざる女子たちが人間になりたい理由、願い、想い――今年は、いったいどんな1年になるのだろうか。彼女たちの「人間になりたい」という希望を、人間嫌いの俺が導いてゆく――
これは、異世界ファンタジーでも、人生やり直し転生でもない。少し変わった学校で、人間を目指す人外女子たちと送る、ただの教師の物語――第2弾!【電子限定!書き下ろし特典つき】

Amazon.co.jp より

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